築38年、30㎡弱、1DKのマンション。状態は悪くないものの、襖、ベージュの壁紙、木目化粧板の天井と、THE昭和な内装。世の中にはこのぐらいの「住めなくはないけど、良くはない」という内装の賃貸が溢れていて、それを費用的にも内装的にも「いい塩梅」にすることが、これからの賃貸運営には重要ではないかと常々思っています。また、改装への投資に躊躇いがあったり、「どんな内装にすれば借り手がつくのかわからない」ならば、いっそ借り手に内装を委ねてしまうのも、ありではないでしょうか。
この部屋は賃貸で、リノベーションの依頼主は入居者である単身女性。親族が所有している物件を借りることになり、どうせなら好みの空間に住みたいと、貸主に掛け合って現状回復義務なしで、借主負担でリノベーションしました。将来引越す可能性もあるので費用は極力抑えたいという意向もあり、どうしても変えたいところ、必要なことを絞り込みながら、リノベーションを進めました。
入れ替えたキッチンは、あえてのレトロなセレクト。オリーブグリーンに塗り直したガラス引き戸の雰囲気とよく似合っています。今の暮らしに合わない押入れはロールスクリーンで隠せるクローゼットに変更。襖はポリカーボネートを貼って再利用しました。壁やガラス戸は施主がDIYで塗装。天井とクローゼット内には調湿作用のある化粧板を貼りました。キッチン横には、洗濯機置き場とドレッサーコーナーを造作。玄関と浴室前の通路は、床をタイルカーペットとザイザル麻風シートにすることで「居室感」を高め、住居の端から端までをプライベート空間として心地よく使えるようにしました。
所在地:東京都中央区
竣工年:1982年
リノベーション年:2020年
建物規模:地上14階建て
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
延床面積:約29㎡
設計・施工:Drawer